まだ壮年でありながら、はやばやと家督を譲り、気楽な立場で江戸暮らしを楽しむ喜連川家の先代藩主・喜連川恵氏。世間から見れば『風変わりな若隠居』といったところだが、この恵氏という男は、ちと違う。時の権力者・老中松平定信から警戒され、御目付役を派遣されるほどの、要注意人物であった。それもそのはず、足利の血をひく喜連川は、徳川家康から客分として認められた、将軍に仕えぬ唯一無二の特殊な大名だったのだ。変わり者の恵氏に振りまわされ、知らぬ間にまわりの者たちも厄介な事件に巻きこまれてゆくのだが…。なにものにも縛られぬ自由な男の痛快時代。大好評の第六弾!